「個人情報をどう守っていますか」という問いは一つに聞こえますが、企業の答え方は四通りあります。この分野の製品比較がわかりにくいのは、別々の仕事のために作られた道具を、同じ物差しで比べているからです。この記事では、四つの方法がそれぞれ何を得意とし、どこで合わなくなるのかを整理し、promptShieldが担う範囲を示します。
四つの方法
| 方法 | 内容 | 得意なこと | 合わない場面 |
|---|---|---|---|
| データ管理基盤 | 組織全体の保存データを分類し、ラベルを付ける | 全社のデータの棚卸しと方針の徹底 | 今期中に一つの業務だけを守りたいのに、導入に何四半期もかかる |
| クラウドのAPI | プログラムから呼び出して検出する。呼び出し回数などで課金 | 大量処理と自動化 | 文書を手元から出せない場合。また、結果を人が見る工程がない |
| 外部委託 | 送った文書を委託先が黒塗りして返す | 社内に人手がない作業 | 文書を渡すこと自体がリスクになり、仕上がりまで数日かかる |
| 手作業の黒塗り | 担当者がペンや注釈ツールで塗りつぶす | すべてを自分で管理でき、責任の所在がはっきりする | 数ページを超えると、検出の手段がなく、見落としに気づけない |
実際の製品で考えると具体的になります。例として、Microsoftのデータ保護とコンプライアンスの製品群であるMicrosoft Purview、GoogleのSensitive Data Protection(現在はCloud DLPもこの中に含まれます)、Amazon Comprehendの個人情報検出機能を挙げます。三つとも、自社の資料で説明しているのは、組織が持つデータやテキストから個人情報を自動で見つける仕事です。
どれもこの仕事のために作られた製品です。たとえばMicrosoft Purviewのデータ損失防止(DLP)には、マイナンバーを見分ける機密情報の種類が用意されています。Sensitive Data Protectionにも、マイナンバー、法人番号、運転免許証番号、パスポート番号、銀行口座番号といった日本向けの検出項目があります。一方、AWSの資料によると、Amazon Comprehendの個人情報検出機能が対象にするのは英語とスペイン語のテキストです。
いずれにしても、名前を出して責任を持つ人が1件の文書を外に出す前に確認する、という仕事とは別の問題です。いま匿名化がいちばん必要になるのは、誰かが文書をチャットAIに貼り付ける場面です。Microsoft Purviewのデータ損失防止には、ChatGPTなどへの送信を監視して止める機能もあります。ただ、送信を止めることと、個人情報をコードに置き換えて渡せるようにすることは別の仕事です。
比べにくい理由
四つの方法は、一本の物差しで上から順に並べることができません。データ管理基盤と手作業の黒塗りは、競合する関係にありません。一つの市場として扱うと、意味のない比較が生まれます。
大事なのは、1件見落としたときの損失の大きさと、どこまで確実さが必要かです。量だけを見ても判断を誤ります。1,000万行のログを処理する仕組みなら、多少の見落としは許容できます。1件ごとの損失は小さく、ほかの対策が残りを受け止めるからです。
訴訟で50件のPDFを裁判所や相手方に出す法律事務所は、そうはいきません。依頼者のマイナンバーが1件漏れるだけで、懲戒や損害賠償の問題になりえます。たとえば、ある製品が「再現率99.5%」をうたっていたとします。ここでは説明のための仮の数字です。それでも50件の文書では、いくつかの氏名が残ってしまいます。
欠けているもの
欠けているのは、専門職によくある場面のための道具です。文書は1,000件に満たず、1件ごとに重みがあります。クリニックが200件の診療記録を研究者に渡す場面、会計担当者が監査に向けて資料を準備する場面、弁護士がM&Aのデータルームを用意する場面、人事部門が社内調査の記録を開示する場面などです。
こうした場面では、自動処理だけに任せることがいちばん危険です。匿名化に失敗しても、その場では誰も気づかないからです。氏名を一つ見落としても、何かが壊れるわけではありません。本物の氏名を含んだまま文書が外に出て、気づいたときには取り戻せなくなっています。
外に出す相手の扱いも問題になります。個人情報保護委員会のQ&A(Q7-53)は、クラウドサービスの利用をどう扱うかについて、判断の基準を「クラウドサービスを提供する事業者において個人データを取り扱うこととなっているのかどうか」としています。事業者が取り扱う場合には、本人の同意が必要な第三者提供や、委託先としての監督といった決まりが関わってきます。文書を読んで処理するAPIや、文書を受け取って黒塗りする委託先は、その性質上、文書の中の個人情報を取り扱います。どちらにしても、確認と管理の手間が発生します。
人が関わり続けるべき理由
責任を負うとは、何かがうまくいかなかったときに、その損失を引き受けることです。機械には失うものがありません。匿名化済みとして文書を事務所の外に出すとき、それを保証しているのは人です。見ていないものは保証できません。ですから、何が消されるのかを自分の目で見て、確認する必要があります。
完全に自動のツールに任せれば、結果を見ないまま信用することになります。99件を正しく黒塗りしても、氏名を1件見落とせば帳消しになります。件数が少ないからこそ、確認ができます。50件の文書ならすべてのページを読めますが、5万件を読む人はいません。この考え方は、人が確認する匿名化について書いた記事で詳しく説明しています。
promptShieldの位置づけ
文書は手元のパソコンから出ません。デスクトップアプリでは、パターンによる検出と固有名詞の検出が、アプリの中で動きます。AI詳細分析は任意で、既定ではオフです。文書がお使いのパソコンの外に出ることはありません。外に渡さないので外部の事業者も関わらず、クラウドのAPIや外部委託に対するいちばん大きな懸念がなくなります。
数分でインストールできます。システム連携の案件も、コンサルタントも必要ありません。デスクトップアプリなので、その日の午後には作業を始められます。
料金は定額です。呼び出し回数、文字数、ページ数による従量課金はありません。書類の多い月も少ない月も料金は同じなので、小さな事務所でも一度予算を組めば済みます。
すべての結果を人が確認します。ソフトウェアは、検出した箇所を領域として示し、人がそれを確認します。ページをまたいで同じ氏名を結びつけ、明らかな誤検出を取り除くので、目視だけで探すより確認の手間を減らせます。領域を確定、修正、追加、削除したあとで、初めてコード化したファイルができあがります。既定では、保護した領域のあるファイルは、確認済みにするまでダウンロードできません。
向いている方、向いていない方
向いているのは、依頼者の機微な文書を自分で扱い、手元から出すものに責任を負う方です。法律事務所、税理士事務所、社会保険労務士事務所、クリニック、人事部門が当てはまります。一つの業務について説明のつく答えを必要としているコンプライアンス担当者や、大きな組織の中で一つの工程だけにオフラインの選択肢が必要なチームにも合います。
向いていないのは、人の確認を挟まず、自動処理で何百万件ものデータを処理する必要がある場合です。それは実在する仕事で、クラウドのAPIやデータ管理基盤はそのために作られています。合わない場合は、そのようにお伝えします。
よくある質問
自社にはどの方法が必要ですか?
処理する量と、1件見落としたときの損失の大きさで決まります。何百万件ものデータなら、クラウドのAPIかデータ管理基盤を選びます。文書そのものが機密である場合、それを外部のサービスに送ることは、こちらの記事で説明しているリスクそのものです。
個人情報保護の製品は、なぜ比べにくいのですか?
それぞれが別の問題のために作られているからです。機能の一覧で並べると、性質の違うものを横に並べることになります。必要な仕事を基準に比べてください。
promptShieldは、どのような場面に向いていますか?
重要な文書を数件、今日AIに渡したい専門職の方に向いています。作業は手元のパソコンの中で行い、AIの回答に含まれるコードは、あとで元の値に戻せます。この仕事のために、検出エンジンを自分たちで作りました。